第2回
無料で簡単!スタートアップのための特許検索入門
2017.10.2
事業を立ち上げていく中で、たとえばこんなことを考えたことはありませんか?
「知らないプレイヤーがいないか把握しておきたい。」
「他のプレイヤーの開発動向を知りたい。」
「提携先候補をリストアップしたい。」
そんなとき、特許公報が役に立つことがあります。特許出願は、出願日から1年半後にその出願の内容が掲載された公開特許公報が発行され、特許庁のデータベース(J-PlatPat)から誰でも検索できるようになります。無料です。公開特許公報には、発明の内容に加えて出願人等の書誌的事項が掲載されますので、適切なキーワードを選んで検索することにより、効率的に有益な情報を得ることができます。
この記事では、シェアリングエコノミーの1つであるタクシー配車サービスの特許検索を考えてみます。タクシー配車サービスとして、ウーバーテクノロジーズの「Uber」がよく知られています。日本では、LINE株式会社の「LINE TAXI」もありますね。発明の内容をキーワードとして検索する手法、出願人をキーワードとする手法、これらを組み合わせる手法、それから、論理式を用いる手法をご紹介していきます。
(1)発明の内容をキーワードに検索する
まず、J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)にアクセスし、ページ左上の「特許・実用新案」から「2.特許・実用新案テキスト検索」を選択します。
そして、たとえば検索項目に「要約+請求の範囲」と表示された入力欄に「タクシー 配車」と入力します。検索方式を「AND」に変更して、「キーワードで検索」のボタンをクリックすると、公開特許公報の「要約」または「請求の範囲」に「タクシー」と「配車」の両方が含まれるものとして、324件がヒットします(2017年8月7日時点、以下同じ)。「請求の範囲」とは、出願書類のうち、特許権の取得を目指す技術的範囲が記載される箇所です。
「一覧表示」のボタンをクリックすると、ヒットした公開特許公報の文献番号、発明の名称、出願人などが一覧で表示されます。ウーバーテクノロジーズ、LINE株式会社以外にも多くの企業が既に出願していることが分かりますね。一覧表示の中から文献番号をクリックすると、その出願の詳細な内容を表示することができます。
このような発明の内容をキーワードとする検索では、どのようなプレイヤーがキーワードに関連する事業に着目しているかを知ることができるため、特許情報は、あらかじめ競合の存在をリスクとして把握したり、提携先の候補をリストアップしたりする上で活用することができます。
(2)出願人をキーワードに検索する
次に、「Uber」の特許出願を検索するために、検索項目を「出願人/権利者」に変更し、その入力欄に「ウーバーテクノロジーズ」と入力して、「キーワードで検索」のボタンをクリックします。すると、「ウーバーテクノロジーズ」による公開特許公報として、3件がヒットします。
「一覧表示」のボタンをクリックすると、ヒットした公開特許公報の文献番号、発明の名称、出願人などが一覧で表示されます。
3件の公開特許公報のうち、下の2件は自動運転に関するものであることから、ウーバーテクノロジーズが自動運転分野に進出しようとしていることが推測できますね。
また、LINE株式会社の特許はどうでしょうか。まずは先程と同様に検索項目を「出願人/権利者」とした状態で、その入力欄に「LINE株式会社」と入力して、「キーワードで検索」のボタンをクリックします。すると、「LINE株式会社」による公開特許公報として、118件がヒットします。
この118件には、チャットアプリなど、タクシー配車サービス以外の事業に関連する特許が一緒に抽出されています。
このような出願人をキーワードとする検索では、他の特定のプレイヤーの開発動向を詳細に知ることができます。
(3)出願人と発明の内容を組み合わせて検索する
ここで、「LINE TAXI」の特許を検索するために、118件の検索結果を1つずつ見てもよいのですが、効率的にタクシー配車サービスの特許を探すために、出願人「LINE株式会社」((2)の手法)に発明の内容「車両 乗物」((1)の手法)を組み合わせてみます。発明の内容については、広くヒットさせるため、検索方式を「AND」とせずに「OR」のままとしてみます。この条件で検索してみると、ヒット件数が118件から3件に絞られ、目的とする公報に容易に辿り着くことができます。
(4)論理式で検索する
「Uber」と「LINE TAXI」の特許をまとめて検索したい場合には、論理式を利用します。
論理式の入力欄に「[ウーバーテクノロジーズ/AP] + [LINE株式会社/AP]*[車両/AC+乗物/AC]」と入力して、「論理式で検索」のボタンをクリックします。すると、「ウーバーテクノロジーズ」による公開特許公報3件と「LINE株式会社」による公開特許公報であって「要約」または「請求の範囲」に「車両」または「乗物」が含まれるもの3件の合計6件を、まとめて抽出することができます。
ここで示した例は簡単なものですが、J-PlatPatでは、論理式を用いるとキーワードを用いるよりも長い文字数が入力可能であるため、より複雑な検索を行うことができます。
いかがでしょうか。
無料のJ-PlatPatでもさまざまな検索が可能なことをご紹介いたしました。費用をかけず効率的に特許情報を入手する手段として、J-PlatPatを是非使ってみてください。J-PlatPatのより詳しい使い方は、以下のURLにヘルプページがあります。
詳細な検討が必要な場面では、弁理士は、こうした特許情報を活用する上で、スタートアップの皆様をお手伝いします。