第13回
スタートアップ向けセミナーレポート
(スタートアップ企業に必要な知財人材と体制)

2022.1.31

特許庁のベンチャー支援班と日本弁理士会関東会の中小企業・ベンチャー支援委員会ベンチャー支援部会は、2021年12月17日に、「スタートアップ向けセミナー ~スタートアップ企業に必要な知財人材と体制~ By IP BASE1,2」をオンラインにて開催しました。

トーク会
【登壇者】
  • 坂 裕和氏 (株式会社マネーフォワード 執行役員CCO/弁護士)
  • 橋本 泰一氏(株式会社RevComm R&D部門統括/理系博士)
  • 中村 泰彦氏(株式会社アクセルスペース 経営管理グループ法務担当/弁護士)
  • 市川 茂氏 (LeapMind株式会社/弁理士)
  • 鎌田 哲生氏(経済産業省 特許庁 ベンチャー支援班長)
  • 安高 史朗氏(IPTech特許業務法人 代表弁理士・公認会計士)
【モデレーター】
木本 大介氏(ピクシーダストテクノロジーズ株式会社/弁理士)

(※)市川氏、木本氏、安高氏の3名は「日本弁理士会関東会中小企業・ベンチャー支援委員会ベンチャー支援部会」に所属

スタートアップの知財担当者を招き、スタートアップに必要な知財人材、役割、採用、体制、そして知財部門の成長等につきパネルディスカッションを行いました。
 皆様共通のご見解としては、スタートアップは人が足りずにやらなければならない仕事の範囲が多岐にわたり、知財担当者といえども知財のことだけをしていれば良いわけでなく、周辺業務や全く畑違いの業務についても積極的に関わって欲しいとのことでした。野球で例えると、全員で攻撃し、全員で守るようなイメージです。

 採用面に関しては、知財担当者の採用については、そもそもスタートアップで働くためのマインドセットを持った人材がマーケットに少なく、採用までの時間が1年以上かかることもざらにあるとのことです。なお、4社中3社では、1人目の知財担当者を採用したのは従業員数が80-300人くらいの頃だったそうです。それを踏まえ、従業員が「100-200人」あたりが初の知財担当者を採用する一つの目安になりそう、との意見が出て皆様納得されていたようです。

 組織面に関しては、スタートアップでは少ないリソースで最大限のアウトプットを出すために、知財戦略を経営戦略に結びつけることが重要であり、そのために組織内における知財部門の立ち位置は悩ましいとの意見が目立ちました。スタートアップでは部門横断的な活動を強く求められる傾向があるため、知財部門を独立させるのではなく、法務部又は事業部に組み込むか、それとも社長室直下にするか、が悩ましいとのことです。このあたりは事業の規模、フェーズ、内容等により、組織構造を柔軟に組み替えていくことが重要であると感じました。

 採用とチームビルディングをスムーズにすべく、優秀な知財担当者を集めるためにジョブディスクリプションを公開するのも有効でしょう。スタートアップ側が求める役割を明確に定義し、十分な能力を備えた上でカルチャーフィットする人材と出会えるまでには相当の時間がかかることが多いので、必要になってからではなく早い段階から募集をかけることが重要です。スタートアップの皆様におかれましては、「知財人材の採用には時間がかかる」ことを忘れずに採用活動を進めていただきたいものです。また、知財人材へのアクセスルートや評価のために、顧問弁理士を付けたり、副業でもよいので知財経験者にサポートしてもらうことも有効でしょう。

 今回のパネルディスカッションが、スタートアップの方々の一助となることを願っております。

1. スタートアップの知財コミュニティポータルサイト 特許庁 IP BASE https://ipbase.go.jp/
2. 特許庁 IP BASEによるイベントレポート https://ipbase.go.jp/event/report/2021/12/event-1222.php